船舶の評価

この度、大型船舶の評価が必要な相続案件があり、船舶の評価を実際にしてみました。

船舶の評価額は、従来の評価通達では、業者等から取得する場合の価額である調達価額の把握が比較的容易であったことから、原則として、調達価額に相当する金額により評価することとしていましたが、現下の社会経済情勢においては、中古船舶について、数多くの取引が行われるようになっており、その取引市場が形成されてきていること、また、インターネット等の情報通信技術の発達等により納税者等において取引価額等の把握も容易となってきていることから、原則として、売買実例価額等を参酌して評価することに変更されました。また、売買実例価額等が明らかでない場合には、従来の取扱いと同様に、同種同型の船舶の課税時期における新造価額から、建造の時から課税時期までの期間の償却費の額の合計額又は減価の額(定率法)を控除した金額によって評価することとされました。なお、船舶安全法の適用を受ける船舶で、課税時期後1年以内に定期検査日の到来するものの価額については、その価額の100 分の 10 の範囲内において相当と認める金額を控除した金額によって評価することができましたが、検査費用の支出が近い将来見込まれることによる減価は売買実例価額等に反映されると考えられることから、この取扱いは廃止されました。
なお、大型船舶についてはその種類、経過年数ごとに相場があり、世界情勢や新船舶の建造状況などにより変動しており商社などから相場のレポートがあるので、その相場価格に実際の船舶に応じた加算又は減算を行い評価しました。
なお、令和2年に東京地裁の船舶の評価に関する判例がありますが、鑑定額の合理性に関するものであり、DCF法などにより計算するなど現実的でない机上の空論的なものでした。そもそも、世界情勢により大きく傭船料が変わる船舶の将来収益など計算することもできないし、戦争やテロなどの発生の予測すらつかないリスクプレミアムをいくらにするかで大きな価格差が出てしまう評価方法なのです。船舶の購入に際して融資を受けたい船会社や株価を上げたい投資家からすれば、将来利益を大きく見積りリスクプレミアムを低く算定すれば大きな融資を受けられるし、保険金額の査定額をさげたい損害保険会社などや節税目的の評価を望んでいるのであれば色々な理由をつけてリスクプレミアムを高く設定して評価すればよいのです。
また、再取得価格に経過年数に応じた償却率を控除して船舶を評価するなど、非現実的です。償却期間経過した船舶も実際には相当額で取引されていますし、償却期間が過ぎたからと言って零円ということは絶対にありません。そもそも船舶や航空機は、オーバーホール(分解点検修理)を繰り返し行い使用するものである現実を無視しています。

文責:

税理士 天池 健治

税理士 / 証券アナリスト / 宅建士 / 公認コンサルタント