時効の完成している借入金の債務控除

既に消滅時効が完成しているが時効の援用手続きをしていない被相続人の借入金は相続税の申告で債務控除ができるかどうかの相談がありました。
この問題については、相続税基本通達(14-4)で「相続の開始の時において、既に消滅時効の完成した債務は、法第14条第1項に規定する確実と認められる債務に該当しないものとして取り扱うものとする。」として、相続税の申告の際には債務控除できないこととなっています。
民法上、時効の効果は援用によって生じることになっていますから、援用手続きをしていない以上、被相続人の借入金の債務は残っていることになります。但し、相続税法では相続税の申告上控除できる債務の範囲を「確実と認められる債務」と規定していることから、相続人が援用手続きをすれば消滅時効が完成する債務については「確実と認められる債務」に該当しないことになります。
ですから、時効を援用せずに任意で相続人が支払った被相続人の債務は相続税の債務控除はできません。また、時効を援用していないので債務は存在しますので、返済を受けた債権者に贈与税がかかることはありません。

文責:

税理士 天池 健治

税理士 / 証券アナリスト / 宅建士 / 公認コンサルタント