名義預金の認定について

 相続税調査において、名義預金として認定する場合、税務署は次のような事実関係を基に行います。

 預貯金等の原資(出捐者が誰か)

 預貯金等の原資が被相続人の資金(被相続人の預金からの乗り換え、不動産や株式の売却代金等)による場合、被相続人から贈与を受けたものか、又は被相続人の単なる名義預金か判断します。名義人の贈与税の申告の有無も確認する必要があります。

② 印鑑及び預金通帳等の保管者と保管状況(預入行為者)

 印鑑がなければ預金は解約できず、必然的に印鑑を所持している者が預金の真の所有者であると推測されることになります。基本的には重要な印鑑を預金通帳等と共に保管するものが真の所有者であると推認されます。

 名義人に所得がない場合、もしくは設定時の年齢等から預金に相応するだけの蓄積が考えられない場合は、その原資等が問題となります。

③ 預貯金通帳・証書の保管者と保管状況(管理・運営者)

 第一義的には証書を所持している者がその権利の所有者とみなされます。

 また、預貯金の出し入れや定期預金等の満期時の書き換えは当然その名義人が自己の責任で行うだろうと推認されることになります。

 被相続人が保管し、その名義人がその預貯金の存在を相続開始まで知らなかった場合、

 または、知っていたとしても名義人の支配下にない場合、その預貯金の真の所有者は誰かが問われることになります。

④ 預貯金利息の受取り(利益の享受者)

 元本の帰属の調査においては、その果実の受取り状況が最も問題となります。

⑤ 処分者

 預貯金の解約、不動産や株式の売買契約などの実行者は誰なのか。

 財産を処分することになった経緯はどうであるか等を考慮して、その財産の帰属を判断します。

⑥ 複雑な人間関係(出捐者、名義人、管理・運用者との関係(内部関係))

 なぜ、被相続人名義ではなく家族名義で預金されていたのか(主に贈与があったのか否か)、なぜ、相続人が管理・運用しているのか(被相続人が財産管理・運用を相続人に委ねていた実態があったのか)といった特別な事情があったのか、また、名義人は同居の親族なのか別居の親族なのか、被相続人の病気療養中及び入院中の財産管理・運用は誰の指示により行われていたのか等を総合的に考慮して判断します。

 なお、判例としては、次のようなものがあります。

○東京地裁平成20年10月17日判決(税務訴訟資料第258号-195)(順号11053)

ある財産が被相続人以外の者の名義となっていたとしても、当該財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められるものであれば、当該財産は相続税の課税の対象となる相続財産となる。

そして、被相続人以外の者の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、①当該財産又はその購入原資の出捐者、③当該財産の管理及び運用の状況、④当該財産から生ずる利益の帰属者、⑥被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、②当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当である。

文責:

税理士 天池 健治

税理士 / 証券アナリスト / 宅建士 / 公認コンサルタント